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配置販売の危機を救うのは実効性のある専門家による対面販売

配置業界に危機

300年におよぶ配置販売業界には、今日の大勢に順応する体質があります。みんな一緒に行動し、集団の中に埋没してしまっています。300年も続いた業界だから何も心配せず安心して、時計の針が回りつづけるような時間の流れや、季節が移り変わってもまた同じ時節に戻るような時間の流れを当然のごとく受け入れています。みんなの関心は、大勢の内なる部分にあり、その中での自己の居場所を求めています。しかし今回、「このような状況では、配置販売業はなくなる。」と考える人達が日本置き薬協会を設立しました。
彼らの、配置販売業界改善ための手段は2つです。
まず第1は、業界は私益にこだわる体質があります。すなわち、自分の利益に直接関係わる場合のみ問題の領域に介入して、私益を強く執拗に主張する。この体質を改め、業界の私益のみにこだわらず、利害を生活者と共にするように改める。すなわち、直接に私益を主張するのではなく、生活者の利害を含む問題の領域全体について複数の可能な解決策の中から好ましい業界の秩序を択んで提案する。
第2は、製造と販売が同じ組織に属しているのが問題です。(製造と販売の私益が異なる場合、私益すら主張できない)今までの組織の現状を反省し、配置販売業者だけの全国組織を立ち上げる必要があります。
そして、2005年11月日本置き薬協会が設立されました。当時「配置業界の危機」が叫ばれ、配置業界全体が、日本置き薬協会の体制に従って急場をしのぐ熱意がありました。結果、翌年の改正薬事法には附則がつけられ、旧法に基づく配置販売が続けられるようになりました。

配置販売における専門家教育

これまで、医薬品全般にかかわる専門家は、薬剤師だけでした。店舗における一般医薬品の販売には薬剤師が対応するきまりになっていました。しかし、現実には、薬剤師の数が少なすぎて店舗内に薬剤師がおれば、専門家でない一般販売員も医薬品の販売が許されていました。すなわち、実効性のある専門家による対面販売がなされていませんでした。配置販売においては、1人の資格者が配置販売業の許可をとれば、何人でも配置従事者を雇用して仕事ができました。すなわち、配置販売においても実効性のある専門家による対面販売がなされていませんでした。
新たな一般医薬品販売秩序は、実効性のある専門家による対面販売です。そのために、薬剤師(医薬品全般に関わる専門家)だけでは人数が足りません、より多くの資格者が必要になります。そこで、新たに登録販売者(医薬品販売に関わる専門家)制度が作られました。本来、医薬品の販売制度は、店舗販売と配置販売の2つあり、新たな制度も、配置販売と店舗販売はおのおの独自の制度ではなくてはならないと考えられます。登録販売者制度は、今までの薬種商制度を新たな時代に合うように改められた制度で、店舗販売に即した制度です。一方、配置販売業界(全国配置家庭薬協会)は厚生科学審議会医薬品販売制度改正検討部会で、配置販売業独自の制度を求めず、店舗販売業者と同じ制度を受け入れました。結果、新たな制度は登録販売者制度だけでした。
ところで、旧法に基づく配置販売業者は、薬事法附則第10条により引き続き業務を続けられます。しかし、附則は経過措置にすぎません。薬業界の秩序に取り込まれた配置業界になれなければ、いずれ附則はなくなり、旧法に基づく配置販売制度はなくなります。日本置き薬協会は、今回の附則第12条に「配置販売業者は、保健衛生上支障を生ずるおそれがないように、配置販売の業務に関し、その配置員の資質向上に努めなければならない」との資質の向上努力義務を付けさせ配置販売業者のための専門家教育に育てたいと考えました。すなわち、従来の配置薬の役割は終わりを迎えている。配置販売業にあらたな価値・役割を創造して、配置販売業を新たな制度に持ち込んでいかない限り配置販売業の存在はむずかしい。消費者・生活者に支持され、配置販売業の役割が国の制度の中に盛り込ませられるためにも配置販売従事者の専門家教育ができるか否かにかかっている。日本置き薬協会は「配置」に新たな役割を創造し新たな制度にまで持ち込む行動を起こしました。
実効性のある専門家による対面販売がなされるためには、配置販売の場合、各々の配置員が1人で居宅を訪問するため、配置員全員が専門家でなくてはなりません。登録販売者は、店舗向け医薬品販売資格です。店舗においては専門家による対面販売をしながら、一般販売員には実務経験を積ませて教育し、試験を受けさせ、登録販売者に育てられます。しかし、配置員単独で配置業務を行なう配置販売では、実効性のある専門家による対面販売と一般販売員の実務経験は、両者が同行しないかぎり両立しません。そして、配置員は医薬品に関する専門知識と居宅を訪問するためマナー教育が必要です。配置員には配置独自の制度にあった専門家教育が必要です。それには、常に新しい薬の知識・マナー教育を修得する教育制度が良い。社内教育では売る為の勉強になってしまうので良くないが、第三者機関による教育を毎年続けると資質の向上が図れ、生活者の保健衛生の向上につながる、と日本置き薬協会は考えます。そこで、配置販売員教育の運営や監理監督を第三者機関に委託し、第三者機関で実施され、運用されることにより、教育制度の厳格性が証明され、より一層信頼性の高いものになります。

置き薬医薬品販売士教育の誕生

2006年1月、一般用医薬品販売に関わる業界団体((社)全日本薬種商協会・日本チェーンドラッグストア協会・日本置き薬協会・日本大衆薬工業協会・(社)日本医薬品卸業連合会大衆薬卸協議会)が結集し、薬業連絡会が組織され、改正薬事法が国民にとってより良いものとして継続的に機能するために何が必要かを、それぞれの業界エゴにとらわれない論議を、長時間かけて真剣に行なわれました。さらに、業界だけの論議だけでは不十分と考え、学識経験者・元事務次官を含む多くの有識者の方々に依頼し、「薬業界運営基準及び資質向上検討委員会」を設置しました。改正薬事法に基づいた、国民あるいは生活者主体の一般用医薬品提供のあり方について、客観的なご意見をいただき、2006年9月13日、その検討委員会の内容をまとめられました。その「薬業界運営基準及び資質向上検討委員会報告書」には、医薬品販売者の資質向上のために、店舗販売と配置販売が一緒になっての「日本薬業研修センター」の立ち上げ構想が含まれていました。また、小売薬業界の横断的協力体制確立のための「日本薬業連絡協議会」設立も提案していました。
今までは、一般用医薬品販売に関わる業界団体に配置団体が加わることはけっしてなかった。しかし、日本置き薬協会は違っていた。単に加わるだけでなく、積極的にイニシャルティブをとり、有識者を集め、「薬業界運営基準及び資質向上検討委員会」の設立に努力しました。すなわち、自分の利益に直接関係わる場合のみ問題の領域に介入して、私益を強く執拗に主張するやり方は、終わりをむかえている。新たな「役割」を配置業界に持ち込むには、新たな配置業界組織は新たな役割を担わなければならない。と考えて行動したのです。
そして、薬業界全体の資質向上のための研修・教育を行う教育専門機関として「日本薬業研修センター」が設立されました。翌年、配置販売業のための専門家教育として、「置き薬医薬品販売士教育」(受験者総数は、1,114名で950名が合格)が行なわれ、成功をおさめた。この置き薬医薬品販売教育は、生活者の保健衛生の向上につながる配置販売員教育としての水準を満たしていると考えられます。この教育を定着させれば、配置販売においては、実効性のある専門家による対面販売ができます。
2008年1月31日厚生労働省医薬食品局通知で、「既存配置販売業者においては、改正薬事法附則第12条の規定により配置員の資質の向上に努めなければならないとされており、別途示す一定水準の講習、研修等の受講を適切に行うこと」と明記されました。別途示す一定水準の講習、研修内容は示されていないものの、2008年度も日本置き薬協会の会員においては、第2回目の「置き薬医薬品販売士教育」が行なわれました。いずれ示されるであろう「別途示す一定水準の講習、研修内容」が「置き薬医薬品販売士教育」以下のものであれば、生活者の保健衛生の向上は危ぶまれるだろう。しかし、それが「置き薬医薬品販売士教育」以上のものであれば、配置業界は更なる努力が必要なものの、生活者の保健衛生の向上は約束されます。見方を変えれば、「別途示す一定水準の講習、研修内容」が高いほうが生活者の信頼が得られ配置業界に新たな役割を持ち込むことになります。日本置き薬協会は、大勢(従来の配置薬業)の外に自立しており、別途示されるであろう一定水準の講習、研修内容が、文章で明記され、実効性を伴った講習、研修になるように活動するべき、と考えました。
既存の配置販売業者の中には、人をたくさん雇用し、大きく業を営む業者があります。これらの業者の多くは残念ながら地域の信頼を得ていない業者が多い。従来の薬事法では、配置従事者身分証明書を取得すれば、医薬品の知識がない新人が1人で営業に出ることが出来る。結果、薬箱を預かっている生活者は、充分な薬の説明が受けられず、不安がある。一方、新人配置員にとっては、ノルマが厳しく、健康食品など高額商品の現金販売をして、目先の利益を追求する。そして、お互いに気まずくなり、生活者は、配置箱を返す。また、新人配置員は、仕事をやめる。すなわち、配置従事者の入れ替わりが激しく、今日の不況下においてさえ、新規募集をしている。一方、薬箱を預かっている居宅は少なくなるため、新たに新懸けをする。しかし、評判がよくないのでなかなか薬箱を置かせてもらえない。つい強引な新懸けになり、結果、地域の信頼をなくす。この悪循環を断ち切るには、配置従事者の資質の向上が不可欠です。社内教育では、売るための教育になり、生活者の信頼は得られない。しかし、「置き薬医薬品販売士教育」は、生活者の信頼を取り戻す教育になると確信しました。
平成21年3月31日薬事法の一部を改正する法律附則第12条に規定する既存配置販売業者の配置員の資質向上について厚生労働省医薬食品局総務課長通知が出ました。その一定水準の講習内容は、講習が売るための社内研修を手直ししたものではなく、実施体制の客観性が確保され、生活者の保健衛生の向上を約束する実効性を伴った講習内容になっています。すなわち、既存配置販売業者及びその配置員には将来性があります。
日本置き薬協会は平成17年11月の会設立当初から、今回の厚労省と同認識(実効性のある専門家による対面販売)のもとに一貫して、「既存配置」継続の附帯条件となる一定水準の講習内容に適合する研修制度を構築し実践しております。これを機に日本置き薬協会への入会を是非お勧め致します。
2009年5月2日記す